「ナルシス」

新宿の歌舞伎町に「ナルシス」というジャズ喫茶がある。
今時、ジャズ喫茶なんてほとんど聞かない。と言うか、私は昔からその手の店はあまり行った事が無いのだが。
ジャズ喫茶と言うと、何となくコルトレーンとかマイルスが掛かっていて、学生がコーヒー1杯で3時間も4時間もネバル、というようなイメージがあった。

友人に連れられて初めて行った「ナルシス」は、掛かっているレコードが、イバ・ビトバとコンビで組んでいたパーカッションのPavel・Fajtとのデュオだの、アルバート・アイラーの昔のトラッドものだの、ピエール・ファブルのトリオだの、超マニアックなフリー系の、私の好きそうな物ばかり。
オーナーの女性は、それはそれは音楽をよく知っていて、誰のいつのレコードは何処でメンバーは誰々、というように詳しい。

彼女と話をして、次々聞いたことの無いレコードを掛けてもらって、コーヒー1杯でカウンターで過ごした2時間は、中身の濃いものだった。

レコードのかすかな傷がかもし出す、CDでは得られない存在感のある安らぎは懐かしく、心地よく、久々の非日常を満喫した。ちょっと病みつきになりそう。