想い出

ソウルから帰って4日経つが、何かと雑事に追われてなかなか日常に戻れない。
家の中もまだ雑然としていて、譜面を書くのも、原稿を書くのもままならない。
しなければいけない事が山のようにあるというのに…。

けれど、あのソウルの雑踏の中の喫茶店で、少し変わった香りのするGINSENG−TEAを飲みながら、次のステージの打ち合わせをしていた時の自分が、ふと蘇ってきたりする。
旅の想い出っていうのは、いつも思わぬタイミングでやって来たりするものだ。
それも、思わぬシーンが、心に深く残っていたりする。
それは決して名所旧跡でもなければ、いわゆるスポットライトを浴びるような、いかにもという場ではない。

急に雨が降って来た、遠い、見知らぬ駅のホーム…
行って見たら閉まっていた店先に、うずくまっていた仔猫…
何が入っているのか分からない、大きなバケツを持ってタクシー乗り場に立っていたおばちゃん…

そんな、なんでも無いようなものが、後になると輝きだすのだ。
切ないくらい、いとおしく。