<関西ツアー★2003>

本当に久々の関西だった。正確にいえば一年半振り。

最近ずっと、関西での演奏を避けて来たような気がする。
親友の村上ユミ子が居た時は東京、京都間を年中行ったり来たりしていたのだが。
彼女が天国へ行ってしまってからは、新幹線が大阪に近づくのが恐かった。彼女のいない場所へ行きたくなかった。
でも今回は違った。渋谷さんとお喋りしながらの車窓は明るい光に満ちていた。
楽しくなりそうな予感に満ちていた。

初日は<Idd・workshop>で、[コブラ]以来の共演関島さん、初顔合わせの中尾さんのトリオ+私。
対版の華の家ケイさんの昭和歌謡もよかった。知らないけど懐かしいようないい曲がいっぱい。

二日目は高槻で渋谷毅セッション。関島さんのチューバ、登さんのサックス、のトリオでエリントン・ナンバーを歌う。素晴らしかった!

三日目は神戸。今日は渋谷さんとデュオ。阪急で六甲を通り、三ノ宮へ。
子供の頃住んでいた神戸。母との想い出が溢れて、六甲の山が涙で霞んだ。
通っていた[長峰幼稚園]はもう無いけれど、[高羽小学校]の校庭、鉄棒、教室が目に浮かぶ。
まだ幼い私が母の膝で甘えている。母の買い物によくついて行ったっけ。
ある日「小学一年生」を買って貰って大切に抱えて帰ったら、付録の漫画本を何処かに落として来てしまった。
べそをかいている私を叱りもせずにもう一回30分もかかる下の商店街まで行ってくれたっけ。
結局本は無かったけれど、そんな母の優しさだけは決して消える事無く残っている。

会場は古い蓄音機やタイプライターが置いてあるレトロな空間。
81歳になるという、どう見ても60歳位にしか見えない心優しいオーナーが古いSPを聴かせてくれる。
六甲の山を見ながらの和みのステージ、そして終演後のお食事会。時を越えた不思議な時間だった。

そして最後の日。ユミちゃんの3回目の追悼ライブだ。
清野たくみ君、岡本博文君、荒崎英一郎さん、ゴリさん、とユミちゃんの曲や彼女に深く関わる曲をする。
演奏が始まろうとした瞬間、後ろでガタッ、と音が。その後、幾度か気配がする。
ユミちゃん、来てくれたんだね。きっとそうだね、と皆で涙。
皆の心が一つになった。いい追悼だった。

祭りが終わったあとのような淋しさがヒタヒタと身を包む。
体の芯が痺れるような虚脱感。今回は特に言葉にならない様々な思いがある。
でも誰もが皆生きていく。今日も、明日も…。