「異人たちの冬」

10年程前に住んでいたアパートの1楷の住人だったM代さん夫婦から、メールが突然届いたのは、ほんのひと月前のこと。
彼女達が引っ越してしまってから、お互い連絡も取れなくなっていて居場所も分からなかった。
私の名前を検索してホームページに辿り付いてくれたのだと言う。
よく覚えていてくれたなー。よく見つけてくれたなー。電脳万歳!
さっそくM代さん、ご主人のKさん、あの頃赤ちゃんだった、今もう立派な高校生のJ君、そしてKさんの勤務先の社長Hさんも一緒に、
以前住んでいた大岡山で逢う事に…。

懐かし過ぎて涙が出ちゃう。飼っていた猫の事、家族の事、仕事の事…長いブランクを埋めるかのように尽きないお喋り。
社長Hさんは気取らない優しい人。家族のように社員を大切にしている。こんな会社ってあるんだ、と勤めの経験の全く無い私は驚く。
一緒に飲もう、ってKさんが言った意味がなるほど、と腑に落ちる。
折角なので、近所に住んでいる時々見て貰っている整体のH先生に電話を入れると、飛んで来て下さる。
なんかあったかいよ。落ち着くなー。地元、っていいな…。まるで法事で家族が集まったみたい。店のTちゃんも一緒にみんなで乾杯!

あっという間の時間。この感覚…。ひどく懐かしい。何か覚えが…。
あっ、そうだ。山田太一の「異人たちの夏」だ。
夢を見ているような身内との出会い…。
この日は私にとっての「異人たちの冬」だったのかも知れない。