東横線・桜木町駅発・最終電車

「市川・りぶる」でのライブを終え、帰途とは逆のコースを乗り継ぎ、桜木町まで行く。
夜風が冷たい。1月も今日で終わりだというのに。
今日は「東横線桜木町駅」の最後の日なのだ。明日からはもうこの駅は存在しない…。

もの凄い人だ。警備員も大勢出動していて、物々しい雰囲気で一杯。
改札は開いたまま。券売機は長蛇の列。誰もがこの駅の無くなるのを惜しんでやって来たのだ。
最後を見届けようと集まった人々の写すカメラのフラッシュが忙しく交差する。

この駅で待ち合わせたあの日、この駅で降りて通ったドルフィーやエアジン。
妙蓮寺に住んでいた母と、自由が丘から行く私が待ち合わせたのはいつもこの改札口だった。
最後に母と「バイバイ」したのもこの駅…。
スグリーンのジャケットを着て、笑って手を振る母が見えた気がした。
甘酸っぱい気持ちで一杯。ホームに入ってきた「桜木町」と書かれた電車を人込みに揉まれながらカメラに収める。
そして最後の「桜木町発」の車両に乗る。車内の路線図も、もう明日からは変わってしまう。
様々な想い出がフラッシュバックする。
この駅の隅々まで、しっかりと目に焼き付ける。絶対忘れないように…。

普段と変わらないように、電車は走り出した。ホームがどんどん遠ざかっていく。
ひとつの時代が終わったような気がする。
走馬灯のように色々な事は通り過ぎ、全てはうたかたのように消えて行くのだ。