サイト映像展・2004

【目で見る音楽・目で聴く音楽】…聾の人たちのための映像作品展
今まで感じた事のない感覚。
何百回とコンサートで歌ってきたが、今回のようなステージは初めての体験だ。
聾の人たちは、どう音を、音楽を、感じるのだろう。(マツ毛で音を「聴く」と後に知った)
私たちの演奏する音楽を感じてもらう事は可能なのだろうか、と最初お誘いがあった時、正直不安だった。
自分にそんな大それた事が出来るのだろうか…。

長年「声」を生業として来て、聴者のためだけではなく、聾の人が「声」を出す手伝いが自分に出来ないものか、と、最近思い始めた矢先に戴いたお話ではあったのだが。

コンサートが始まったとたん、そんな不安は吹き飛んでいた。
普段のライブのお客様とは全く違う反応。静かだ。空気が張り詰めている。
けれどそれは、緊張による張り詰めとは違う。極限まで「集中」している、というような。
何かに似ている…、そうだ、「祈り」だ。
人が神や、何か無限なる力に祈る事に「集中」する時…、そんな感じなのだ。
祈るように音楽を聴く。祈るように何かに集中する。
それはインプロビゼイションを演奏している時の状態にも近いものがあるな、と思った。
ステージの「こちら」と「そちら」と言うのは、本当に「相思相愛」な関係で、そちらが集中してくれると
こちらも自然にフワッと集中する事が出来る。
「無」に近い感じで集中すると、そこにえもいわれぬリラックス感が生まれる。
今日はその集中⇔リラックス、が実現したステージになったのだと思う。
まさにそれは「祈り」だ。

「聴いて」くれているみんなから、凄くいっぱいパワーを貰った。
ピアノの谷川さん、映像作家の田中さん、素晴らしかったです。
プロデュースの佐藤さん、有難うございました。お疲れ様でした。
素晴らしいステージだった。