キムさんの雨

去年亡くなった金大煥さんの、息子のような存在だった鼓奏者の大倉正之助さんが、キムさんのゆかりの人たちの、キムさんとのエピソードを聞き集めて本を出すことになった。
その本に、私と金さんの話も入れたいというので、今日インタビューを受けに恵比寿まで出かけた。
インタビュアーの女性も、金さんをとても慕っていたというので、三人で熱く想い出を語ってしまった。

三者三様の想い出は尽きること無く、気が付くと、とっくに時計は午前一時を回っている。
後から合流した大倉さんの奥さんが車で家まで送ってくれることになった。
泣いたり笑ったりして、すっかり浮世から遠いところに行っていた私達。
店のドアを開けると、外はちょっと生暖かく、久しぶりの雨が降っている。
皆一瞬、立ち止まって空を見上げた。
キムさん…。みんな、あなたのこと、決して忘れないよ。