前世のこと、その?

_______つづき__________

銃の音を聞かれてしまっているので、弟は死んだ事にしなくてはいけない。
暫くの間、誰か来そうになると、オバアチャンはさっと木の机の下に弟を隠して暮らしていた。

__第三幕__
暫くたったある日のこと。
こんな時代だけど、近所で小さな村の鎮守様を祭る(?)行事があった。
近所の友達が一緒に行こうと迎えに来る。
その子は同い年なんだけど、履物を履いている。お金持ちだから。
羨ましいけど、そんな事口に出せない。オバアチャンは今日のために自分の着物をほどいて私の着物作ってくれたんだもの。それが精一杯って知ってるから…。
何も言わずに、黒い裸足の自分の足と、(木で出来たような)履物の友達の足元ををじっと見る…。

オバアチャンは台所で、木の実を何粒か小さなすり鉢ですって、白い粉が出たのを指先につけて、私の鼻筋と頬にチョンチョン、と塗ってくれる。ちょっと大人になったような、誇らしい気分。
行ってきます、と友達と出かける。

__第四幕__
場面変わって…。ある日の夕方。
とてもキレイな夕焼け。私は一人で散歩をしている。
家の近くの畑の真中に、いつも可愛がってくれる近所のおじいちゃんがしゃがみこんで座っている。
おじいちゃん、こんにちは…。言おうとして言葉を飲む。

泣いているのだ。
掌には、首から下げた銀製の小さなロケット。細く、籠のように編んである華奢な作りのロケットの中には、亡くなったおじいちゃんの奥さんや息子さんの写真が。
「本当にこんな戦争はいやじゃ。」おじいちゃんの涙に、私もつられて泣いてしまう。亡くなったお母さんの事を想い出して。

これは本当に夢だったのか…。
余りに生々しく、夢から覚めた私は暫くボーっと、何も手に付かなかったっけ。

__つづく___