前世のこと、その?

20歳の頃、ある夢を見た。
それは○○年経った今でも、昨日の事のようにハッキリ鮮明に思い出せる。
あんな夢は、めったに見るもんじゃない。
4部作のカラーの、まるで映画なのだ。

__第一幕__
場所は中国。時代は辛亥革命の頃(おそらく)。
私は13、4歳の女の子。オバアチャンと、5歳位の弟と、3人暮らし。
お父さんは戦争に行ってるし、お母さんは戦争で死んでしまったから…。

窓のすぐ下を、朽ちた木が真中に斜めに立っている、雨が降った後のようなあまりキレイじゃない大きな川が流れている。
裕福でない、つましい暮らし。
木のガッシリした机と椅子。台所には大きな水カメ2つ。カメの上には木のフタに柄杓が置いてある。
土間の床。窓はガラスも何も入っていない。ただの穴。

オバアチャンは細い三つ編みをうしろに一本垂らしてる。
私は黄色い、少しシャリシャリした生地の、赤と緑の絣のような模様が少し入った着物を着ている。袖はつつっぽになっていて、丈はひざとくるぶしの間くらい。ヒモで横で結んだだけの簡単なものだ。
足ははだし。庶民の子は靴なんてないの。

__第二幕__
幼い弟は時々ぐずる。無理も無い。お母さんが居ないんだもの。
オバアチャンがなだめるけど、その日に限って弟は泣き止まない。
大きな声で、「こんな戦争なんか嫌いだー!」と、決して言ってはいけない非国民的な言葉を吐いてしまう。
この時代、そんな事を聞かれたら、いつも目を光らせている憲兵たちに殺されてしまっても仕方ないというのに。戦争を良しとするのが、いい国民だって言われてるのに。

案の定、戸を一枚隔てた通りを歩いていた憲兵たちに聞かれてしまい、戸を足で蹴破って部屋に入ってきた一人の若い憲兵が銃を構えた。
弟が撃たれてしまう!オバアチャンは憲兵を必死に止めようとする。
ズドン!…。もみ合ううち、銃が暴発。外でワイワイ人の気配。弟が撃たれたものと、みな思っただろう。
弟は目をまんるくして石のように固まっている。
次の瞬間、憲兵はオバアチャンの振り下ろした重い木のイスで、ばったりと床に倒れたのだった。
________________つづく______________