TAIWAN 4

カラフルなゼリーや小豆が入ったガラスのボールが幾つも並んでいる。、屋台のカウンターに座って、荒く砕いた氷の入った器に何種類か入れてもらって、皆美味しそうにチリレンゲで食べている。どんな味なんだろう、と覗き込んでいると、お客さんの中のふくよかなおばちゃん二人連れが「美味しいよ!」と笑顔を向ける。「食べていきなさいよ、ご馳走するから」
え?…、一瞬耳を疑った。見ず知らずの人が?私達にご馳走してくれるの?なんで?
さあ、さあ!と勧められ、断る隙も理由も見つからないまま、気付いたらカウンターに座っていた。
好きなの頼んで!、とおばちゃん。
えー?とまだしどろもどろで、でもこれがいいかなぁ、とおばちゃんの食べているのと同じレモンのゼリーを指差す。
この氷がコリコリしてて美味しいよ、さ、食べよ!とにこにこ。
わー、頂きます。シャキシャキ、コリコリ…、美味しい!さっぱりしててほのかに甘くて。懐かしいような、優しい味。そうだ、さっき買った龍眼(木の実)があった!これ、食べて!と差し出す。わあ、ありがと、と素直に受け取ってくれる。よかった!
日本語ぺらぺらの姉妹なのだという彼女たちは、食べ終わると、じゃあ、ごゆっくりね!と去っていった…。
日本じゃあり得ないよ。知らない人がご馳走してくれるなんて、何か魂胆があるんじゃないか、とか、裏があるんじゃないか、等とどうしても思ってしまうよね。でも違うんだ。ただ自分が美味しかったから、喜びを分かち合いたかっただけなんだ。
ある意味、ショックだった。彼女達の気持ちと、日本人である自分の受け止め方が、あまりに落差があったから。自分がとても疑い深い不純な人間に思えた。

カウンターを立ってフワフワ夢の中を歩きながら、不思議な喜びに包まれていた。
こういうことが旅の醍醐味なんだな。
素敵な一期一会。私は決して彼女達の事を忘れないだろう。
TAIWANは大好きな国のひとつになった。―おわり―