朝焼けの虹

久し振りに虹を見た。しかも朝焼けの中に、ポッと浮かんだ虹を…。

ある依頼を受けて、半年前から月一回ボーカルレクチャーの講師をしている。
講義の内容を毎月考えてプリントを作るのだが、結構これが大変。
約3時間のレクチャーのための準備に5〜6時間はかかってしまう。
昼間の仕事が押して夜になってから取り掛かった。
30人の生徒の顔を思い浮かべて内容を詰めていく。刻々と時は経って行く。

パソコンと首っ引きの作業がやっと終わって、カーテンを開いて外を見る。
白々と明けた東の空は真っ赤に燃え、なんとも美しい虹が架かっているではないか。
眠さも忘れて呆けたように立ちすくんで虹を見ていた。あまりの美しさに、涙がこぼれそうになった。
ほんの数分で淡く消えて行った虹…。

数年前にニューヨークで見た虹を思い出していた。
マンハッタンからD列車(A列車ではない)で少し行ったブロンクスの友人の家に暫く厄介になっていた。
あと数日で日本に帰る、という時、一緒に買い物をしていたYが、あっ!虹!と小さく叫んだ。
見るとちょっとどんより曇った空の端っこに、今朝のと同じような可愛らしい虹が浮かんでいた。
日本に帰るのだ、というちょっと切なさと嬉しさが混ざり合った甘酸っぱい気持ちで見ていた。
でも何となくいい事がありそうな気がして嬉しかった。
すぐ母に電話で報告したっけ…。

今朝の虹、母は上から見ていたんだろうな。