魚と泳ぐ

何年ぶりかな。海で泳いだのなんて…。
岩と砂と木に囲まれたプライベートビーチ。私達3人以外は殆んど誰も居ない。
波の音とセミたちの声以外聞こえるのは風のそよぐ音だけだ。
シュノーケルと水中メガネで見る世界は別世界。そこはどこか遠い宇宙のよう。
熱帯魚のような、色とりどりの魚の群れ。キラキラ光る太陽が水中で泳ぐ。
手を差し伸べると魚たちは一瞬その列を乱すのだが、次の瞬間はまた同じように彼らにしか解らない言語で
「はい、こっちだよ〜。」なんて言っているかのように集まる。
何百匹もがまるでひとつの生き物のようだ。
彼らを追いかけて泳いでいると、自分が青く光るウロコの魚になったような気がする。
砂浜に上がってビールを飲む。寝転がって見る空は子供の頃見たと同じような夏色。

セミたちの合唱はいつの間にかひぐらしの声に変わっている。水平線は遠くゆらめいている。

私の夏。やって来た。