ワタシノ 住ンデルトコ

この前の地震で、スタンドが落ちて粉々になり、電子レンジが5センチも動いていたほど地盤のヤバイ品川区○○町にある私のうち。あの程度であんなだから…おっきなの来たらイチコロだなー。

アパートの階下の住人は、サングラスをいつもしてる、ちょっとコワオモテの50ガラミのおじさん。
越して来た時は、廊下ですれ違うとピクッ!としてたんだけど、最近印象がガラッと変わったんだ。

おじさんは九官鳥を飼っていて、毎日、言葉を教えてる。
もうかれこれ、半年も教えているだろうか。なかなか覚えないキューチャン。でもおじさんは、毎日毎日、飽きずに、懲りずに、「オハヨ」とか、なぜか「ピーッピ、ピーッピ、ピピピピ、ピッピ(口笛でおサルのかごや)」とか「ホーホケキョ」を、時間があれば教えている。フフフ、あの怖そうなおじさんがねぇ、なんてほくそ笑んじゃう。
ベランダの上から私が覗くと横目で(鳥は横目か!)こちらを見て、ピュ〜ッ、って鳴く。可愛い。

オッチョコチョイな私は時々洗濯物を下のベランダに落としてしまい、すみません〜!ともらいに行くのだが、その日もおじさんの口笛が聞こえていたので、あ、居るな、と思い、チャイムを押した。
ん?何度押しても出てこないぞ。でもおじさんの声と口笛は聞こえるのに…。
おサルのかごやが聞こえるのに…。「ホーホケキョ」も聞こえるのに。

そう思ってドアの前でちょっと立っていたら、なんと下からおじさんが帰ってきたではないか!!
えっ?!じゃあ、あの声は…九官鳥君?!つ、ついに覚えたんだ〜!
「九官鳥君、覚えたんですね!」と私。「あ、はい〜。」ニコーーッ。全身笑みのおじさん。

それからはもう、おじさんの事、ちっとも怖くない。
「熱海行って来ました」なんて、椎茸の含め煮なんかくれちゃうし。

大家さんのおばさん姉妹も一階に住んでいる。生徒たちが集まるので、買い物しておっきな袋二つ持ってた時、「あら、凄いわね!お料理なんか出来るの?エライねー。」とか旅の仕事に行く時挨拶しに行くと「可愛い服ねー。若い人はいいわねー。」とか、いったい私を何歳と思ってるんだろう、って思うような、優しい言葉をかけてくれる。「店子と大家は親子みたいなもんよ。」なんて泣ける様な事も言ってくれる。
ガスを消し忘れたかな、と心配になった時も、電話したら見に行ってくれたり…。

だからね、いいの。地盤が悪くても。地震が来たらペッチャンコ(笑)でも。
蚊も居ないような、緑のない町中だけど。…ここが好きなんだ。