鈴虫

夢の中で、鈴虫の声がした。
今朝はちょっと肌寒い。毛布を首まで掛け直して耳を澄ます。
あ、確かに鈴虫だ。ついこの前までは、蝉の声だったのに。

小学生の頃、夏休みが終わって新学期が始まり、真っ黒に焼けたみんなの
久し振りに会えた喜びの歓声が響くプールサイド。
『はい、静かにして』と先生。
子供たちの声と入れ替わりに、フッと聴こえて来たのは、鈴虫の声。
プールサイドの草むらで鳴いているのだ。

夏が終わった事を告げる風の匂い。雲の形。
ちょっと切ないような思い…。
その思いって、何だか友達に優しくしたくなるような気持ち。
なんだか心が素直になっていくような…。
今年も新しい季節がこうしてやって来る。
切なさは優しさ。優しさは命の力。
いい秋を迎えられますように。