湘南学園・課外授業

予想は裏切られた。いい意味で。
我等が母校、湘南学園の小学校5、6年生たちはちゃんと子供らしいコドモだった。
犯罪の低齢化、白けた世代、といったイメージ、いや実際に身近に接する子達は
もっと斜に構えている子が多いのだが、そんな観念は払拭された。

「ぼくは12歳」の配ってあったプリントの詩を食い入るように見つめながら聴く子。
組曲全11曲を聴き終えため息をつく子。「大人っぽいね」なんて言い合いながら。
同じ年齢であえて死を選んだ岡真史君の言葉をどう受け止めたのだろう。

即興ワークショップは一筋縄ではいかない。
この年齢特有の、あまりに研ぎ澄まされている痛いような感性はテレ、ふざけというものを蓑にする。
おそらく一生で一番センセィティブな年齢なのではないかしら。
そのテレから開放され、フッと音楽と近くなれた時に生まれる何とも愛らしい音世界。
「大先輩・高橋悠治先生」と一緒に声を出せた紅潮した子供たちの顔。
あの瞬間はきっと大人になっても大切な宝物になるに違いない。

授業を終え廊下を歩く私たちを取り囲むように目をキラキラさせながら子供たちが集まってくる。
質問攻め、握手攻めだ。
大きな声で「有り難うございました!」「また来て下さい!」…なんて可愛いんだろう。
ねえ、幾つなの?なんて質問には答えませんからねーだ(笑)。

湘南学園は昔から一風変わった学校だった。先生がいい。
どの世界もホンネとタテマエで動いているけれど、驚くほどホンネで生徒と接してくれるのだ。
権威とタテマエでこてこてに塗り固められた清泉女学院から湘南学園に転向した私は、
見る見る元気な子供らしいコドモになったのを覚えている。
高校まで過ごしたこの学校の卒業生である事を、今でも誇りに思っている。

帰り道は6年間通学した懐かしい江ノ電で鎌倉まで出てみた。
友達と遊んだり喧嘩したりしながら通った道…制服を着たちょっとすました私が見えた。
昔2両だった車両は4両になり、ホームもそれにつれて長くなっていたが、
窓からののどかな景色、夕陽がキラキラ光る海、人家の間をすり抜けるように
走る江ノ電のあたたかみは変わらなかった。

可愛い後輩たちと、そして尊敬する先輩との時空を超えた貴重な一日だった。
なへなへ先生、ありがとう!