「眼の夢」という夢

ピットイン「眼の夢」から一晩明けた。
夢のようなきのうは本当に現実にあったことなのだろうか。
開け放った雨上がりの窓の外は蝉たちの声でいっぱい。

何だかまだ夢の続きの中にいるような気がする。

こんなにも濃い時間が、この世にはあったのだなぁ。
この世に生を受け、両親に愛されて育ち、音楽と出会い、多くの人と出会い、
そして高橋悠治という人と、山本達久という人と出会い、そしてきのうという日があった。

昼から降り始めた雨は開演前には嘘のように上がり、このライブを祝福するかのように、
妖しさをたたえた美しい空になった。
満席のピットイン。後ろのほうは立ち見の人たちでいっぱい。
待ちに待ったこの時間。緊張と歓喜が体中に満ちる。

音が始まったとたん、まるでこの世との決別を告げるかのような青白い閃光に包まれた。
ここはいったい何処なのだろう。新宿のピットインは一体何処と繋がっていたのだろう。
高橋悠治という生命体は人間である事なんか軽々と超えてそこに存在していた。
気が付くとアンコールの声。あ、そうか…と我に戻る。

きっと自分が何かしているわけではないのだ。何もする必要は無いのだろう。
ただ在るだけ。時空に身をゆだねるだけ。
全てが現実であって、現実ではないのかもしれない…。

渋谷毅さん、豊住芳三郎さん、スリーブラインドマイスの藤井さん、副島先生、イッシーさん、
ライラの望月さん、いつも応援しくれているみなさん、初めて聴いて下さった方たち、
ピットインの鈴木さん、録音してくれた藤村さん、スタッフの皆さん、そして私の可愛い生徒たち、
そして写真を担当してくれた山口さん、ビデオを担当してくれた佐藤さん…

この場に共に居て下さって喜びを分かち合えたみなさんに、心から感謝と愛を送ります。
本当に本当に有難うございました。