ライオン堂のおばちゃん

商店街のちょっと外れにあるライオン堂。お鍋やタワシやちょっと洒落た雑貨を売る店。
髪をパープルに染めた元気いっぱいのおばちゃんが看板。
商売抜きで、髪も洗えるオリーブ石鹸や、体がスベスベになるグレープシードオイルを教えてくれたのもおばちゃんだ。
優しそうなご主人と仲良くて、街で人気のオシドリ夫婦。

去年体調を壊して一時入院。 でもすぐ退院して、だいぶスリムになって、でも元気でお店に出てた。
「ちょっと、これすごくいいの入ったのよ〜!!」って例の調子で。
再入院の知らせを聞いたのは、それから間もなくだった。 時折覗くとお店はポツンとご主人ひとり。

日曜日にお店の前を通ったら、閉まったシャッターに、何と「忌中」の張り紙。
鼻の奥がツーンとなった…。

今日は近くのお寺で告別式だった。
そうか、おばちゃん、こういう名前だったんだ。今まで知らなかった…ごめんね。
たくさんの弔問客が後から後からやって来た。みんなハンカチを目に当てていた。

そっとお焼香させてもらった…。
一回りもふたまわりも小さくなってしまったご主人が痛々しい。

おばちゃんの元気な声が耳にはっきり蘇った。
「こんな優しいダンナより先にはゼッタイ死ねないよ!すごく愛されてんだから…。」

お葬式の帰り、いつも商店街…何だか違う場所みたい。
おばちゃん、どうぞ安らかにね。