ハーモニーヒル

朝8時に目覚し時計を合わせる。
7時30分に、自然に目が覚める。
ベルが鳴る前に、止める。
不思議だな、2時間も眠っていないのに…。
いつもなら、私にとっては完全に真夜中なのに。

来月やる、谷川賢作とのコンサートの会場の下見に、富士山まで行く。
河口湖から少し行った鳴沢村という所にある、ハーモニーヒル、という会場。
画家の画廊だったというこの建物は、何処も無駄がなく、それでいてゆったりとくつろげる真っ白いステキなホール、というより家。

雪がまぶしい。何か動物の足跡が、雪の上に残っている。
大きなツララが、軒先に光っている。遠くに鳥たちの鳴き声が聞こえる。

ここは別天地。空気が全然違う。
オーナーの尾上さんお手製の干し柿を頂きながら見上げる空は、本当の青。

すぐ目の前には、まるで両手を広げて待っていてくれたかのような富士山。
大きくて、凛々しくて、やっぱりアナタは日本一の山。

ピアノの音は柔らかく室内に響いて。
マイクなしで、声は自然なまま、皆に届いて。
来てよかった…。

私の歌う、武満徹の「3月のうた」は、
この場所に違和感なく受け入れてもらえるだろうか。
「死んだ男の残したものは」は、樹海で眠る魂に届くだろうか。

『山菜や木の芽も、3月になれば芽吹いて来ますよ!』という尾上さんの言葉で、
来る楽しみがまた増えた。
ものみな芽吹く3月、である。