赤いからす

吉祥寺に赤いからす、というライブハウスがある。
25年位の歴史を持ち、ジャズの老舗として色々なミュージシャンが出演している。

私はここ10年位の付き合いだが、一昨年マスターが病気で亡くなられた。
いつもカウンターで、大きな優しい目を私たちミュージシャンに暖かく向けてくれていた。
写真が大好きで、よく演奏写真を撮ってもらったりもした。

病院にお見舞いに行ったら、「病気なんて、どーってこと無いぞ!大丈夫!皆も頑張れよ!」なんて、逆に元気付けられたりした。
いつも気持ちが真っ直ぐ前を向いた人だった。ミュージシャンに暖かかった。
まさか、亡くなってしまうなんて、考えもしなかったな…。

ママ一人では、気持ちも体力も限界だった。
おしどり夫婦だったから、落ち込みが激しかった。
食事もままならず、すごく痩せて、痛々しかった。
赤いからすはこのまま終わってしまうのか、と皆淋しかった。

それから暫くして、杉田さんという人が、あとを受け継いでくれる事になった。
あったかい感じの、温厚そうな人だった。
よかった。出演していたみんなはホッとした。
マスターの灯火が消えずに済んだんだ!
それが今の店長。愛称すぎちゃん。

すぎちゃんの代になって、今日で1年。
今日は「ニュー赤いからす」の1歳のお誕生日だった。
ミュージシャンでいっぱいの店内は、半袖でも熱いほどの熱気に包まれていた。
久々に会う懐かしい顔がいっぱいいた。
次々に演奏が行われる。色んなタイプの演奏者たち。
他のボーカルも、こんな事でもない限り、めったに聴けない。
みんな、心を込めて精一杯の熱演をする。一人一人素晴らしい。
私は守屋純子ユニットで、エリントンのナンバー「デイ・ドリーム」を歌う。

亡くなったマスターのママの姿もあった。
懐かしさに胸がいっぱいになる。(ママと私はミニチュア仲間)
色んな想い出が次々に浮かぶ。
きっとマスターも喜んでくれていた気がする。

すぎちゃん、赤いからす、ずっと頑張って続けてね。
みんなも是非、赤いからすに足を運んでね。