「6月」の雨には…。

横浜の関内に「ニューストーク」というライブハウスがあった。
そこの道子ママは、ゴッドマザーだった。
礼儀を知らない迷惑なお客には、平気で「ここはアンタの来るような所じゃないよ!帰りな!」なんて啖呵を切ったりして、えらくカッコよかった。

道子ママはミュージシャン達にはお母さんみたいで、いつも行くと「オナカは空いてないの?」なんて聞いてくれ、何かしら食べさせてくれたりした。
私はまだ若くて何も知らず、実験的にフリーとか、色々やってみたい時期だった。
道子ママは何も言わず、黙って私のやりたいようにさせてくれたのが有り難かった。

私は旅に行くと、自分の母と、道子ママと、二人にお土産を買った。
ママは誕生日を覚えていてくれ、欲しかったイヤリングをプレゼントしてくれたりした。とても可愛がってくれた。
ミュージシャン達は、みんな道子ママをすごく慕った。

ちょうど10年前の6月1日。道子ママは帰らぬ人となった。
脳溢血だった。
倒れてから皆で病院に詰めていた。亡くなったのは二日目の朝だった。
病院を出ると、近くにバラがいっぱい咲いていたのだけ、なぜか覚えている。
いい香りだった。
華やかな道子ママにピッタリの朝だった。

この時期になると、道子ママを想いだす。
トークに出演していた7年間。亡くなって10年間。
何て年月は早く流れるんだろう!

6月10日に私は、父のようだった中村八大さんを亡くしている。
同じ年の同じ月に、二人は旅立って行ってしまったんだなぁ…。

今年も6月がやって来た。
花や、風の香りが切ない…。