アンドリュー・ワイエス

アンドリュー・ワイエスの絵に、「遠くの落雷」というタイトルのものがある。
一匹の痩せた犬が見ている丘の向こうの暗い空に、微かに光るものが見える。
帽子を顔に掛けて昼寝をしている女性は、まだ遠い嵐に気付いていない。
緊張感のある湿った空気や、生暖かい風が届いてきそうな、私の好きな一枚だ。

ワイエスの絵からインスピレーションを受けて作った曲もある。
「ペンシルヴァニア・ランドスケープ」という曲だ。
去年ミディ・クリエイティブからリリースされた私のCD「ルキサン・スアラ」に入っているが、ペンシルヴァニアの田舎の丘に立つ、町を見下ろす大きな白い木は、何か、希望を象徴しているようで、明るく力強い一枚だ。

絵の見えてくるような音楽…。
音の聞こえてくるような絵…。

五感を持って生まれた私達に与えられた楽しみ方。
何かを深く味わうと、そのものが持っている特性が意外な光を放ち出す。

「ルキサン・スアラ」とは、インドネシア語で「音の絵」と言う意味。
CDを聴いてくれて、見えてくる何かがあったとしたら、それはあなたの中に眠っているもう一人のあなたが見ているanother worldの景色なのかも知れない。