風に思う

なぜだろう。風の強い日って色々な事が思い出される…。

突風で傘がおちょこ(今でもそう言うのかな?)になって、可笑しくってゲラゲラ笑いながら友達と雨に濡れて歩いた小学校の帰り道。

台風の去った翌日、犬と一緒に海を見に行った家の近所の由比ガ浜海岸。
怖いような灰色の波と、砂浜いっぱいに押し寄せた流木や大きな海藻なんかをボーっと見ていた、失恋したばかりの若き日。

そして、ベルギーのホテルの窓を叩く、大風になびく木々…。
一番思い出深いのはベニスに泊まった時。サンマルコ広場に吹く風に夜半目覚め、カランカランと旗竿が鳴っていた冬の夜。物悲しく響くその音は、今でもはっきりと耳に残っている。

風の強い日は、何か普段と違う気配が町に漂う。
心が掻き立てられるような、不思議な興奮。

今日の夜中に、また台風はやってくるのだろうか…。
窓の外はびゅうびゅういい始めている。