やまとさんのこと…1

富山に「日の出小劇場」という大好きな場所がある。
最初は、渋谷毅さんに連れて行ってもらったのがきっかけ。
それから、オーナーのちゅうべいさんや、土地の皆と身内みたいな仲になり、「東京からの最多出演者」と笑われるくらい
何度もそこでライブをさせて貰っている。
やまとさんも、その大好きな仲間の一人。一緒に飲んだり、彼の人形と遊んだり…。
富山と言う場所は急接近で私の人生に入って来たのだった。

何回目かのココペリでのライブだったその日「人形と絡んでみない?」とちゅうべいさんが言い出し、
それは楽しそう!とトントンと話が運んだ。

ピアノの上に、やまとさんと、相棒のポンチャンの人形がフッと現れた時の感動…。きっとずっと忘れられない。
人形にこんな表情や心があるなんて。
人形にこんなにいとおしさ、可愛らしさ、憧憬を感じるなんて…自分でもビックリした。
やまとさんは魔法使いだ。そうに違いない。

やまとさんの人形は、命を持って私たちに静かに語りかけて来る。
去年の10月、富山の能楽堂で行われた馬頭琴とパペット、影絵と朗読がひとつになった「スーホの白い馬」は圧巻だった。
あまりの素晴らしさに、殆ど嗚咽するくらい涙が止まらなかったっけ。
公演が終わって、楽屋から出て来たやまとさんに思わず抱きつき、また涙が止まらなくなってしまった私…。
やまとさん本当にキラキラ輝いていたな。
あんな感動した事って、恐らく生まれて初めてかもしれない…。

やまとさんと私はどこか繋がっている…。
私は昔、小学校などで絵本の読み聞かせをしていたことがある。
好きな絵本を、和紙を手でちぎって紙に貼り付け、横に長い大きな紙芝居を作って子供たちに読んで聞かせるのだ。
小さな子供が目を輝かして聞き入る姿に、益々のめり込んだ私。
紙芝居作りの最初に選んだのが、何と「スーホの白い馬」なのだ。
馬頭琴の音をまだ聞いた事が無かったので、博物館で録音させて貰い、カセットで流しながら数人の
登場人物になりきって色々な声で読み聞かせるのは本当に楽しかった。(続)