さようなら、小川俊彦さん。

ジャズ・ピアニストの小川俊彦さんが、4/22に亡くなっていた。
今日仕事場で、その事を知りました…。

昔小川さんの演奏に感動した小娘だった私は「始めてのコンサートをしたいので、是非一緒にやって下さい!」と
恐れも知らずお願いしたのでした。
「小川さん、いいんですか?どこの馬の骨とも知れない小娘…。」とドラムの小津昌彦さん。
小川さんは無視して「一曲歌ってみなさい」と歌わせてくれた。
まあ何とか合格だったらしく「やってもいいけど、条件がある」と小川さん。
ドキドキしながら、いったい何なんだろうと緊張していたら、「今まで歌って来たものを発表する、という形なら
僕はやらない。もし君がイチから始めて、全て新たに勉強して挑む、というならいくらでも協力する」
と、それは願ったりの、温かく厳しい事を言って下さった。

特別な勉強の仕方を教わり、封書でのやり取りが始まりました(まだFAXも無かった)。
添削して貰って、またやり直して送る、という作業が続きました。
全曲新曲です。部屋中あちこちトイレの中まで歌詞を貼り付けて、眠っている間以外は勉強、
という受験生みたいな生活が2ヶ月続きました。
今思えばたった2ヶ月で我ながらよくやったなぁ。若かったんだなぁ。

さて、いよいよコンサートです。
銀座ヤマハホールは親兄弟も応援に来てくれ、いっぱいになりました。
不安がいっぱいだったけど、本番は神がかったように上手く行きました。

終わって、打ち上げで小川さんが言ってくれた。
「君の始めてのコンサートを一緒に出来たのは、僕の誇りです。やってよかった…。」
涙で小川さんの顔、かすんじゃったっけ…。

奇をてらわないオーソドックスな、とても上品にスイングする素晴らしいピアノだった…。
自分のやりたい事がどんどん変わって来て、小川さんとはここ10年以上ご一緒する事は無くなってしまっていたんです。
また何か一緒にやりたかったな。
ワープロ話で(パソコンではない)よく盛り上がったっけ。

お酒とお蕎麦とワープロが大好きな小川さん。
私は誰にも歌を習った事は無いけれど、あなたは唯一の私の「師」でした。
一切の売名と全く縁の無い潔さ…真の芸術家。
小川さん、あなたと出会えて、そして親のような溢れる愛情を持って接して下さった事、
決して決して忘れません。本当に有り難うございました。
さようなら…小川さん。