コルコバド

コルコバドの丘に登った。ずっとずっと長い間憧れていたところ。
おっきなキリストの下に立ち、よく晴れた眼下のイパネマ、コパカバーナ、の景色を見下ろしていると、
何だかこれは夢なのか…現実なのか…と、白昼夢の中に居るよう…。
ああ、遂に来たんだなぁ…。ブラジルに。そしてコルコバドに。

小学五年生の頃だったかな、家にあったアストラッド・ジルベルトの歌う「コルコバド」を初めて聴いたのは。
彼女は英語で歌っていたのだが、いっぺんで好きになり、子供だったので仮名をふって覚えたっけ。

中学生になってから、色々覚えた歌のレパートリー表(って言ったって、30曲もないんだけど)を生徒手帳に書きとめてあって、
大人になってからそれを見て、思わず自分で大笑いしちゃったっけ。
だって、コルコバドのことを、「コルコ鳥」って書いてあったのだもの。あ〜、情けなっ!バードっていうから「鳥」だと思ったのね。
おバカな私の青春…。カワイイねぇ…。

鎌倉に住んでいたので、ヨットハーバーのパーティや海辺のレストランで歌わせてもらうと、ちょっとしたお小遣い稼ぎが出来た。
大好きなコルコバドも必ず歌ったっけ。
そんな事が色々頭に浮かんでは消えた。私の、心の宝物、コルコバド…。
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夜はセントラルにあるライブハウス、Cultural Cariocaで、Teresa Cristinaの歌う古いサンバを聴く。
華奢で小柄な黒人の彼女は、さらりとした歌いかたで、哀愁があり、とても好きなタイプだった。
途中、彼女のお母さんがステージに上がり、一緒に歌った。微笑ましいなぁ。
驚くのはお客さんが知ってる曲になるとみんな一斉に歌いだす事。音程も歌詞もバッチリでウマい!
ああ、やっぱり恐るべしブラジル!なのだ!

バルコニーでカイピリンがを飲んでいたら、すぐ隣に居たのは何とマりーザ・モンチ!
話をしたら思ったより気さくな人だった。
テレサもステージ終わってからこちらに来てくれて話をした。
とても誠実なお人柄。何だかマキシン・サリバンのブラジル版って感じだ。

帰りのタクシーから、丘の上に白く光るコルコバドが見えた。
何だか泣きそうになった。