友を想う

20年程前、ひょんなことから年齢の違う男性と親友になった。
あるひとつの共通の事柄を体験し、おそらくその瞬間、お互いを生涯大切にして行く相手として
魂に深く刻み込んだのだと思う。
けれどそれは恋愛とは全く違う質の愛情で、身内としての家族愛。
私の身に何か起これば、間違いなく命に代えて彼は私を守っただろう。
何も押し付けない。何も期待しない。けれど全てを受け入れてくれる、そんな関係。
一緒にあてどもなく散歩をしながら取り留めの無い会話をしたあとは、自分の気持ちが整理されていた。
もう一人の自分と会話しているような感覚。
日本語の起源も研究している彼の学問への探究心は多岐に渡っていて興味が尽きなかった。

定年を期に彼はそれまでの生き方を180度変えて、以前からの夢だったウガンダへ渡った。
何も無かったウガンダの地に家を建て、何ヘクタールもの畑を作り、池を掘り、アヒルを飼い、友人をたくさん作り、
井戸を掘り、安い中古車を輸入し、向うに住んでほんの数年で町の小さな銀行まで作り、多くの人たちから慕われるようになった。
分厚い手紙にはウガンダでの様子が細かく書かれていた。
決して若くはないのに何ていう行動力。すごい!

ある日奥さんから電話が掛かった。
彼が急に亡くなったという電話だった。

そんな事って…。
マラリアだった、と聞かされた。
あまりに、あまりに突然な別れ。
さがさんが来たらいつでも住めるように部屋を用意してあるよ、って言ってくれていたのに…。

いつかきっとウガンダへ行ってみよう。
どんな空なのだろう。どんな土の色なのだろう。どんな人たちがそこで生きているのだろう。
この目でいつかきっと、確かめてみたい。

今日は彼の命日。